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あらすじOutline
東京都葛飾区小菅のアパートで女性の絞殺死体が発見される。被害者は、ハウスクリーニングの会社で働く滋賀県在住の押谷直子だった。殺害現場のアパートの住人・越川睦夫も行方不明になっていた。
この事件の捜査に当たったのが、松宮たち警視庁捜査一課の刑事たちだ。しかし、押谷直子と越川睦夫の接点がまったく見つからず、捜査は難航する。
なぜ、滋賀在住の押谷直子が東京の見ず知らずの男性のアパートで殺されることになったのか?それを知るためには、彼女が東京にやってきた理由を調べる必要があった。
やがて、その理由は明らかになった。彼女は、東京にいる演出家の浅居博美に会いに来たのだ。押谷直子と浅居博美は学生時代の同級生だった。滋賀の老人ホームで博美の母親らしき人を見つけ、それを報告するために浅居博美に会いに来たのだ。しかし、直子が東京に来た理由が分かっても、捜査が進展することはなかった。浅居博美と越川睦夫の間にも接点がなかったからだ。
松宮刑事には、もう一つ気になることがあった。押谷直子が殺害された同じ日に、近くでホームレスの焼死体が見つかったことだ。殺害された日が同じであること、現場が近くであること、さらに、越川睦夫とホームレスの生活に同じ印象を感じることなどから、松宮は、二つのの事件が繋がっているのではないかと感じていたからだ。しかし、それはあくまでも松宮個人の感覚であり、確たる証拠は何もなかった。
捜査が難航する中、松宮は従兄の加賀刑事に会った。それは、事情聴取で浅居博美の事務所に行ったときに加賀が写った写真を見かけ、二人が知り合いであることが分かったからだ。その時松宮は、加賀から重要なアドバイスを貰い、それがきっかけでホームレスの焼死体が越川睦夫であることが判明する。松宮の予想通り、二つの事件は繋がっていたのだ。
御礼を兼ねて加賀に会った松宮は、捜査一課が掴んでいる情報を加賀に教えた。その中には、『越川のアパートにあったカレンダーに、12箇所の橋の名前が書かれていた』という情報もあった。しかし、その情報を聞いて、加賀の顔色は一変する。行方不明になっていた加賀の母親の遺品の中に、それと全く同じ12箇所の橋の名前が書かれたメモがあったからだ。加賀が行方不明の母親の居所を知ったのは、その母親が亡くなったあとだった。母親が世話になっていた人から加賀は母親の遺品を引き取っていた。その遺品の中に例のメモがあったのだ。つまり、行方不明だった加賀の母親と越川睦夫には接点があったということである。
そして、これらの橋が加賀の属する警察署の管轄内にあったことから、今度の事件捜査に加賀も加わることになった。やがて、加賀の慧眼が事件の真相を次々と暴いていく。この事件の裏に隠された悲しい真実とは?
当サイトの管理人より
この小説「祈りの幕が下りる時」は、今までの加賀恭一郎シリーズで謎とされていたことが明らかになる。それも、今回の事件と接点を持たせながら描いているところが絶妙である。加賀恭一郎のプライベートな部分がかなり明かされた作品となっている。